多くの家族で、介護はほとんど成り行きでひとりの肩にかかってきます。いちばん近くに住んでいるから、「段取りが得意な人」だから、母に手助けが必要だと最初に気づいたから――。数か月たつと、その人が介護の大半を担い、不満を募らせている一方で、ほかのきょうだいは誰からも何も聞いていないので、問題なく回っていると思い込んでいます。
そうなる必要はありません。上手に介護を分担するというのは、すべての作業をきっちり半分にすることではありません。何が必要かを正直に話し、それぞれが現実的にできることに作業を合わせ、その取り決めを見える形にして、あとから調整できるようにすることです。このガイドでは、その方法をご紹介します。
「公平」は「均等」とは限らない
きょうだいは、住んでいる場所も、仕事や家庭の事情も、健康状態も、経済状況も、親との関係も、それぞれ違います。車で10分のところに住む姉と、別の地方に住む弟が、同じことをできるわけではありません。できるふりをしても意味がありません。
より公平な目標は、全員が意味のある、頼れる形で関わり、主な介護者がほかの誰にも見えない負担を抱え込まないようにすることです。たとえば、ひとりは週に3日直接介護をし、もうひとりは支払いや保険の電話、書類をすべて引き受け、3人目は費用の一部を負担して、年に2回は丸1週間交代する、といった形です。
ステップ1:作業を見える化する
分担を決める前に、今実際に何が行われているかを書き出しましょう。介護の大半を担っている人に、ふだんの1週間を書いてもらいます。送迎、電話、処方薬の受け取り、食事、支払い、夜遅くに送った心配のメッセージまで、すべてです。離れて住むきょうだいは、そのリストの長さに本当に驚くことがよくあります。
作業を種類ごとにまとめると、分担しやすくなります。米国国立老化研究所(NIA)の分担用ワークシートは、作業を種類ごとに並べ、それぞれの担当者を書く欄を設けています。印刷用の「家族の役割分担表」も同じしくみです。
ステップ2:親も交えて話し合う
NIA は、本人と関わる予定の全員が参加する会議や電話会議から始めること、できれば緊急事態がないときに開くことをすすめています。誰が何を手伝うかについて、特に身の回りの介助については、親にも意見を言う機会があるべきです。
話し合いのための実践的なヒントです。
- 雰囲気がぎくしゃくしているなら、中立の進行役を頼む。落ち着いた親戚、家族ぐるみの友人、またはソーシャルワーカーやケアマネジャーなどの専門職が考えられます。
- 議題を事前に共有する。ステップ1で作った作業リストも一緒に送ります。
- これからの3〜6か月に焦点を当てる。起こりうるすべての将来を話す必要はありません。
- 最後に、作業ごとに担当者の名前を書く。次に確認し合う日も決めておきます。
印刷用の「家族の介護会議メモ」を使うと、話し合いが脱線しにくくなります。
ステップ3:得意なことに合わせて作業を割り当てる
NIA は、誰が何に向いているかを考えることをすすめています。誰が家族への連絡役になれるか、誰がメールやメッセージのやりとりに慣れているか、誰が気持ちの支えになれるか、誰が医療スタッフと話せるか、誰が日々の手伝いをできるか、誰がお金の管理に強いか、などです。
近くに住むきょうだい
- 定期的な訪問と話し相手
- 通院や用事のための送迎
- 家の中での直接の手伝い
- 緊急時の最初の連絡先(代わりの人も決めておく)
遠くに住むきょうだい
NIA によると、離れて暮らす介護者は、お金や支払いの管理、自宅への手助けの手配、医療用品の注文、病気についての情報収集、記録の管理などを手伝えます。ほかにも、次のようなことができます。
- 共有カレンダーとリマインダーを管理する
- 地域のサービスを調べ、平日の日中に問い合わせの電話をする
- 親の了解を得て、電話やビデオ通話で受診に同席する
- あらかじめ決めた期間、介護をすっかり引き受けて、近くに住む介護者にしっかり休んでもらう
- 親に定期的に電話する(それ自体が立派な支えです)
ステップ4:連絡の取り方を決める
家族間の摩擦の多くは、蚊帳の外に置かれた、不意打ちを食らったという気持ちから生まれます。次のことを一緒に決めておきましょう。
- 近況をどこに書くか。グループチャットはひとつ、共有カレンダーもひとつ、メモを書く場所もひとつにします。NIA も、家族で共有するオンラインの連絡先リストやカレンダーが役に立つと述べています。
- どのくらいの頻度で知らせ合うか。主な介護者が毎週短いまとめを送れば、「お母さんどう?」というメッセージが次々に届くのを防げます。
- 何を緊急とするか。すぐに電話すべきこととメッセージで足りることを決めておきます。
- 誰が医師と話すか。たいていはひとりかふたりで、親の書面による了解を得ておきます。
ここで大いに役立つのが、共有の介護日誌です。訪問や電話のあとに全員が同じ場所にメモを書けば、同じ話を3回繰り返す必要がなくなります。「介護日誌作成ツール」と印刷用の「訪問介護の引き継ぎシート」は、まさにそのために作られています。
ステップ5:お金のことははっきり話す
お金はいちばん切り出しにくい話題であることが多いので、早めに、わかりやすい言葉で話し合っておくと安心です。話し合っておきたいことは次のとおりです。
- 親自身のお金を介護にどう使い、誰が記録をつけるか
- 自分のお金を使っているきょうだいがいるか、それをどう記録し、どう精算するか
- 介護のために仕事を減らしているきょうだいに補償をするか、するならどのようにするか
- 大きな出費をどう決めるか
介護にかかった支出と領収書は、簡単でよいので記録しておきましょう。それが全員を、特に親の口座を管理している人を守ることになります。印刷用の「月間介護予算シート」と「在宅介護の費用計算ツール」を使えば、数字がはっきり見えてきます。
ステップ6:代わりの人と休みを組み込む
NIA は、ひとりですべてをこなせる人はいないこと、そして主な介護者にはレスパイト(休息)が必要なことが多いと強調しています。役割分担表のすべての作業に代わりの人の名前を書き、主な介護者の休みも、通院の予定と同じようにスケジュールに入れましょう。
レスパイトは、家族、友人、ボランティアが担うこともあれば、訪問介護やデイサービスなどの有料サービスを使うこともあります。遠くに住むきょうだいは、1週間泊まりに来たり、定期的なレスパイトの費用を負担したりすることで、いちばん大きな力になれることがよくあります。詳しくは、レスパイトケアの計画についてのガイドをご覧ください。
うまくいかなくなったとき
よいプランがあっても、ぶつかることはあります。次のような接し方が役に立つことが多いです。
- 相手の人柄ではなく、影響を伝える。「この4か月、通院は全部私が付き添っていて、もうくたくたなの」のほうが、「あなたは全然手伝わない」よりも伝わります。
- 具体的にお願いする。「隔週の土曜日をお願いできる?」のほうが、「もっと手伝ってほしい」よりも引き受けてもらいやすくなります。
- やり方の違いを受け入れる。きょうだいの買い物の仕方が自分と違っていても、たいていは問題ありません。
- 暮らしが変わったらプランを見直す。介護に関わる誰かに新しい仕事、子どもの誕生、健康の問題などがあれば、分担を見直すタイミングです。NIA も、必要なことも関われる時間も変わるため、定期的に確認し合うことをすすめています。
- 行き詰まったら外部の助けを借りる。同じ言い争いを繰り返してしまう家族には、家族間の調停者、カウンセラー、ソーシャルワーカーが力になってくれます。
書面にして、最新に保つ
いちばん役に立つのは、取り決めを書面にして、全員が見られる場所に置いておくことです。役割分担表、共有の週間スケジュール、日々の出来事を記録する日誌があれば、介護は誰かひとりが頭の中で抱え込むものから、家族みんなで分かち合えるものへと変わります。
出典
- Sharing Caregiving Responsibilities — National Institute on Aging
- What Is Long-Distance Caregiving? — National Institute on Aging
- Caregiver Worksheets — National Institute on Aging
- What Is Respite Care? — National Institute on Aging
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