介護は、たいていの家族にとって「さあ始めよう」と決めて始まるものではありません。親が夜の運転をやめる、支払いがたまり始める、転倒して入院する――そうして少しずつ忍び寄ってきます。気づけば、2、3人の家族がそれぞれ少しずつ手伝い、誰が何を担当しているのかはっきりしないまま、いちばん多くを担っている人が静かに疲れ果てていきます。
家族介護プランは、この状態を解決するためのものです。親に何が必要か、それぞれの部分を誰が手伝うか、状況が変わったらどうするか――それを家族で共有する書面の記録にすぎません。長いものや堅苦しいものである必要はありません。ただし、書き出して、みんなで合意し、誰でもすぐに見られるようにしておくことが大切です。
このガイドでは、その作り方を順を追ってご紹介します。
書類からではなく、親から始める
プランは親の暮らしについてのものですから、その中心にいるのは親自身です。参加が難しい場合を除き、何をいちばん大切にしたいかを尋ねてみましょう。住み慣れた家で暮らし続けること、毎週友人とのランチを続けること、できるかぎり自分でお金を管理すること、身の回りの介助を誰に頼むか自分で選ぶこと、などです。
支援の話ができてほっとする親もいれば、自立を失うように感じる親もいます。「もうできないことのリスト」ではなく、「望む暮らしを続けるための工夫」としてプランを伝えると、受け入れてもらいやすくなります。尋ね、耳を傾け、親の希望を本人の言葉のまま書き留めましょう。
ステップ1:本当に必要な手助けを洗い出す
役割を分担する前に、どんな作業があるのかをはっきりさせる必要があります。米国国立老化研究所(NIA)は、介護でよく必要になることを、身の回りのケア、家事、食事、医療の調整、移動、お金や法律の手続きなどの分野に分けています。
親と一緒にふだんの1週間を振り返り、今すでに手助けが必要なところと、近いうちに必要になりそうなところを書き出しましょう。
- 身の回りのケア:入浴、着替え、身だしなみ
- 家事:掃除、洗濯、庭仕事、家の修理
- 食事:買い物、料理、特別な食事
- 健康:通院の予約、付き添い、処方薬の受け取り、服薬リストの管理
- 移動:通院や買い物、外出への送迎
- お金と書類:支払い、保険の請求、各種給付の申請書類
- 人とのつながりと心の健康:訪問、電話、趣味、外出
できるだけ具体的に書きましょう。「食事の手伝い」では割り当てにくいですが、「日曜日に1週間分の食料品を注文し、作り置きのおかずを2品用意する」なら簡単に割り当てられます。
ステップ2:家族会議を開く
必要なことがわかったら、みんなで集まりましょう。NIA は、本人と関わる予定の家族全員が参加する会議や電話会議から始めること、できれば緊急事態が起きる前に開くことをすすめています。
会議をうまく進めるためのポイントです。
- 事前に議題を送る。洗い出したことと、決める必要があることを書き出します。印刷用の「家族の介護会議メモ」を使えば、シンプルに整理できます。
- 遠くに住む家族も参加してもらう。ビデオ通話や電話で十分です。距離があってできないことはあっても、すべてができないわけではありません。
- 主な窓口役を決める。NIA は、今すぐ必要でなくても、早めに主な介護者を決めておくことをすすめています。そうすれば、いざというときにその人がすぐ動けます。
- 実際的な決めごとに集中する。昔からの家族間のわだかまりが表に出てくることもよくあります。それを受け止めたうえで、話をリストに戻しましょう。
- 決まったことを書き留め、会議のあとに全員に送ります。
ステップ3:誰が何をするか決める
近くに住んでいる人だけに任せるのではなく、それぞれの得意なことや事情に合わせて分担しましょう。NIA は、誰が家族への連絡役に向いているか、誰が医療スタッフと話すのが得意か、誰が日々の手伝いをできるか、誰がお金の管理に強いか、といった問いを考えることをすすめています。
遠くに住んでいる家族にも、こんなことができます。
- オンラインで支払いをし、保険の書類を管理する
- 地域のサービスを調べ、問い合わせの電話をする
- 共有カレンダーを管理する
- 親に定期的に電話して、おしゃべりする
- それがいちばん力になれる形なら、費用を負担する
役割分担表を使うと、これが目に見える形になります。作業ごとに、担当者、代わりの人、頻度を書き込みます。NIA も同じ考え方で作られた分担用のワークシートを提供しており、印刷用の「家族の役割分担表」も同じ発想で作られています。どの作業にも代わりの人を決めておくことで、誰かが体調を崩したり旅行に出たりしても、プランが崩れずに済みます。
ステップ4:大切な書類と連絡先をまとめる
介護プランは、その裏づけとなる情報が1か所にまとまっていると、ぐっと役に立つものになります。NIA の「身辺整理」のチェックリストでは、大切な書類をファイルや引き出しにまとめておく、あるいは何がどこにあるかをノートに書いておき、信頼できる人がその場所を知っているようにしておくことをすすめています。
親と一緒に、次のものを集めるか、置き場所を確認しましょう。
- 最新の服薬・サプリメントのリスト(量と処方した医師も記入)
- 医師、薬局、そのほかの事業者の名前と電話番号
- 保険証や保険の証書番号
- 事前指示書や、医療やお金に関する判断を代わりに行う人を指定した書類(作成済みの場合)
- 主な口座や支払いの情報
代理人を指定する書類や事前指示書がまだ用意されていない場合は、親本人が、できれば法律の専門家と相談して決めることです。制度は国や地域によって異なります。プランには「要相談」とだけ書き、誰がその手配を手伝うかを記しておけば十分です。
電話のそばや冷蔵庫に、緊急連絡先のシートを貼っておきましょう。「高齢者の緊急連絡シート」ツールと印刷用の「緊急連絡先シート」は、まさにそのために作られています。
ステップ5:スケジュールを組む
役割が決まったら、それをカレンダーに落とし込みます。週間スケジュールがあれば、どの日に誰が訪問するのか、木曜日の通院に誰が車を出すのか、どこに空きがあるのかがひと目でわかります。
空きがあることも、大切な情報です。たとえば火曜日の午後に誰も行けないなら、デイサービス、訪問介護のヘルパー、ボランティアの訪問など、外部の手助けを検討するタイミングかもしれません。近くでどんなサービスが利用できるかは、地域の保健・福祉の窓口や、地域の介護者支援団体に相談してみましょう。
「週間介護スケジュール作成ツール」を使えば、全員が同じカレンダーを見られます。印刷用の「週間介護スケジュール」は、冷蔵庫に貼ったり、紙のほうが好きな親に渡したりするのに便利です。
ステップ6:もしものときに備える
どんなプランにも、いくつかの「もしも」への答えが必要です。
- 主な介護者が急に1週間対応できなくなったら?
- 親が入院したら、誰が病院に行き、誰がほかの家族に知らせる?
- 親に必要な手助けが急に増えたら?
- 合鍵を持っているのは誰?いちばん早く駆けつけられるのは誰?
答えをプランの短い項目として書いておきましょう。すべての場面を解決する必要はありません。危機のさなかに誰かがその場で考えなくて済むようにしておくことが目的です。
ステップ7:お金の話は早めに
介護の費用は知らないうちに膨らむことがあり、お金は家族間のもめごとの大きな原因のひとつです。日々の出費をどう扱うか、誰が領収書を保管するか、大きな出費をどう決めるかを、早めに話し合っておきましょう。人に手助けを頼む予定があるなら、「在宅介護の費用計算ツール」で月々の予算を見積もることができます。
プランを生きたものにしておく
介護プランは、一度作って終わりではなく、使いながら育てていくものです。NIA も指摘しているように、親に必要なことも、家族が関われる時間も、時とともに変わります。定期的に声をかけ合い、プランを更新しましょう。
多くの家族には、次のようなシンプルなリズムが合っています。
- 毎週:メッセージや電話で、翌週の予定を確認する
- 毎月または3か月ごと:短い家族会議で、うまくいっていることといっていないことを振り返る
- 大きな変化があったとき:入院、新しい診断、引っ越し、介護する人自身の状況の変化など
最新版は、共有フォルダ、家族プランナー、親の家に置いたファイルなど、全員が見られる場所に保管しましょう。更新のたびに日付を書いておけば、誰かが古い版を見て動いてしまうことを防げます。
プランは、みんなへの思いやり
書面のプランは、親の希望を守り、負担をより公平に分け、主な介護者が毎回言い出しにくい思いをせずに手助けを頼めるようにしてくれます。難しい判断がすべてなくなるわけではありませんが、事実を手元に置きながら、家族みんなで向き合えるようになります。
出典
- Getting Started With Caregiving — National Institute on Aging
- Sharing Caregiving Responsibilities — National Institute on Aging
- Getting Your Affairs in Order Checklist: Documents to Prepare for the Future — National Institute on Aging
- Caregiver Worksheets — National Institute on Aging
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